本来いるべき所に戻るんだ。
というのが建前だけど、
要は全てから逃げ出したいだけなんだ。
悠真くんが心から笑わなくなったのは、
私が事故に遭って耳が聞こえなくなったから、
臆病で弱かったから、
悠真くんに恋をしてしまったから────
もし耳が聞こえたら……って考えても意味がないのに、
悠真くんと上手くいく展開を想像して、その度に現実を見るような気がして、嫌になってしまう。
考え事をしていたら、学校を発つ時間になったので駅に向かうと、もう既に杏奈ちゃんは壁に寄りかかって本を読んでいた。
「……?」
杏奈ちゃんの方へ向かおうとすると、彼女と同じ学校の制服の男子が杏奈ちゃんの隣に立っている。



