建物の中で探したり、場所が変わるにつれて、彼女の顔は青ざめていった。
『もう新しいの買った方が早いよね』
どうしよう……なんて返せばいいんだろう。
『まだ交番に行ってないよね。
交番に届いてるかもしれないから行ってみようよ』
『う、うん……!』
落ち込む顔を見たくないから、とりあえず提案してみたが、勢いよく頷いた姿を見て、安心した。
というよりむしろ、その勢いに思わず笑みをこぼしてしまう。
「すみません、おまわりさん」
交番に入って、中にいるおまわりさんに話しかける。
分からない所はスルーして、分かる所だけで内容が理解できたのでどうにか会話が成立できた。
「……あ、これか?」
おまわりさんは一回確認してみる、と席を外していたのだが、戻ってきた。
手にはパスケースがあって、定期が入ってもおかしくない大きさだ。
受け取って確認すると、高尾 杏奈と彼女の名前が記されていた。



