「……あ」
そして俺は"手話"の本を見て、あることをひらめいた。
せめて、俺だけでも手話を使えたら……。
そう思った時には、もう既に手話の本を手に持ち、会計へ向かったのだった。
「895円でございます」
俺はお財布を取り出し、お札を置こうとすると、
店員さんがニコニコと微笑ましい顔をして見つめているではないか。
「……これで」
気恥ずかしくなった俺はボソッとそれだけ言うと、お釣りが返ってきて、本と共に受け取るとすぐに本屋から出て行った。
あーもう、なんで俺がこんな気恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだ。
だけど、天津さんのことを想像すると自然と頰が緩んできて。
……ま、悪くないか。
片手に手話の本が入った袋をぶら下げて、俺はそう思ったのだった。
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