何、あれか?
集中すると周りが見えなくなります、的な?
段々苛立った俺は、天津さんの席まで近づいて、彼女の視界を手で遮った。
ようやく俺に気づいた彼女。
「なあ、なんで無視すんの?」
俺が言ってることは通じたと思う。
だけど、彼女は声にすることはなく、カバンを持って帰ろうとした。
俺はその態度をみて拍子抜けするが、更に苛立って彼女の腕を掴んだ。
「……離して」
初めて聞いた彼女の声。
少し高めで透き通ってきて……綺麗だなと柄にもなく思った。
だけど、苛立っている。
「お前が無視するからいけないんじゃん」
お前、と女子の前ではそう呼ばない。
乱暴だし、汚い言葉だと思ったからだ。