キレ気味になりながらも思ったことをそのまま返すと、彼は顎に手を当てて考え込むような仕草をする。
そして何か閃いたのか、鞄から筆箱とノートを取り出して何か書き込んでいく。
「……?」
何書いてるんだろう……?
だけど勝手に覗き込むわけにもいかず、書き終えるまで待ってみる。
『なんで俺の言ってることがわかるの?
いつから聞こえなくなったの?』
そうして書き込んだのは素朴な疑問だった。
「なんでわざわざ書いたの?」
「天津さんが間違えないようにと思って」
そんな風に言ってくれる人、今までいなかった。
耳が聞こえないと分かれば、みんなは歩み寄ろうともせずに壁を作ってしまうから。
彼の行動に嬉しく思うのと同時に、あまりにも新しいので戸惑ってしまう。



