だって、夢の中とはいえ。
『日和、ごめんな』
悠真くんの声がちゃんと聞こえたなんて……。
聴力が消えた私には絶対に起きないこと。
夢だから可能だったのかもしれない。
優しい声だった。
悠真くんってすぐにわかる声だったな。
ほんのひと時の夢に浸りながらも、それ以上に私は嫌な予感がしたのだった。
今日から夏休みが明けて新学期。
起き上がると、いつもより暗い感じがしたので窓から覗くと、空はどんより曇っていた。
スマホを確認しても、悠真くんからのメールの返信は未だに来なかった。
毎日、些細なことでメールで会話していたのに、ある日突然、悠真くんからパタリと返信が来なくなった。
悠真くん、大丈夫かな……。
忙しいのかもしれない。
気にしないと心で言い聞かせても、どうしても気になる私がいた。
「……」
夢の内容も頭から離れない。
もう既にあやふやだけど、悠真くんが離れて行ってしまう夢だったと思う。
返信が来ないことが重なって、不安な朝だった。