カンカンと音が鳴る。少々踵のあるサンダルは五月蝿いこと極まりない。
それでも走った。まだ遠くには行っていない筈、追い付く筈。
信じて走り、求めた。
「透佳さん!」
夜に紛れて消えてしまいそうなその姿を。
名を呼ばれ振り返った彼は一応ながら立ち止まって私を待っていてくれたのだが。
「っ、あ!!」
その傍に行くよりも前にガクンと体が傾いた。ヒールでなんて走るものではない。前のめりに私は倒れてしまった。
地面に膝を擦り付けはしなかったが、両膝を思い切り打った。
オマケに足首は変に捻ってしまったらしい。
「ったぁ……」
ズキズキと膝下から痛みを感じた。今日は付いていない日なのかもしれない。
「あーあ。何やってんの」
上から降ってきたのは呆れたような言葉。抑揚が無いために、呆れているようには聞こえないが。


