虚愛コレクション



よくよく見れば入り口付近で溜まっていて邪魔だ。お客さんにも店員さんにも迷惑だろう。分かっているのに足は動かない。


「つーか、ちぃと西君は何でここにいんの?」


返事以降、口を動かさない私に代わるかのように神楽君が問いかけた。

すると千代は瞬時に照れたような困ったような妙な表情を浮かべ答えるのだ。


「えっとね、花火終わっちゃったから解散になって、それで、にっ西君、が送ってくれるって言うからお礼に飲み物でも奢ろうと思ってコンビニに」

「なるほど」

「さっき神楽が祈と抜けるって言ってたからこっちは大丈夫かなって。でも……」


一旦切られたそれに続く言葉は、なかなかどうして的を射ていた。


「さっきの人、ちょっと冷たい感じだったけど祈本当に知り合い?」


千代の性格からして純粋に心配してくれているのは分かる。だが、反発してしまったのは口実が欲しかったのだ。


「悪い人じゃないよ。――……ごめんね、ちょっと気になるから。今日はここでバイバイ」


……彼を追い掛ける口実が。