千代に視線を送って何度目かの時、日中の千代のように今度は神楽君が私の視界に入ってきた。
「何か気になる事でもあんの?」
気づいている訳ではないのだろうが、やけにタイミングがいい。
いや、良くはない。
「えっ?ううん?ないよ?ないない」
多分、きっと、笑えてない。だって、こんな事で“私を一番に思って欲しい”なんて考える私が心底気持ち悪いのだから。
神楽君は、私をジッと見つめると何を思ったかこう言った。
「ちょっと抜け出さねぇ?僕、喉渇いたし」
「あ、うん。いいよ?」
もしかしたら気に掛けてくれたのかもしれないなんて思ってしまった。でなきゃこのタイミングでこんな提案などしない。
とは言え、本当に自販機を目指しているでどうとも言えないが、自販機なんて近くにない為に、もしかしたら当たってる裏付けになるのかもしれない。
「あー……これコンビニ行った方がはえーかな」
「そうだねー」
裏付けになるからって、絶対に「気を使ってくれた?」なんて聞かないけど。
「ちょっと歩くけど平気?」
「平気平気。私、歩くの好きだし」
「そっか」
神楽君がニッと笑うので私もつられて笑ってしまう。こういうつられてしまう明るさと言うのが神楽君の不思議な所だ。
そうして向かったのは、花火をしていた浜辺からは全然近くないコンビニ。
何処にでもあるそのコンビニに入った瞬間、自然と体が止まった。
「……」
家、逆方向なのに。


