「……」


彼からの答えはない。何となく嘘臭いと思われているんだろうなと思う。

彼に視線をやると、グルグルと包帯を巻いている最中だった。白い色が目に突き刺さり、ツンッと微弱な感覚が走った。

けれどまだ、続ける。


「お父さんは分からないですけど、お母さんは寂しくてやっちゃったのかなぁって最近思うようになりました」

「……」

「寂しさ、埋まるの何となくわかりました」

「……バカみたい」


返答せずにいた彼はポツリと確実に呟いた。私はそれに顔をしかめもしないし、返事もしない。

だって、分かってる。バカなのだ。ママも、私も、多分パパも。皆。


「埋まる訳ないじゃん。少なくとも俺といるアンタは。だって俺、アンタの事嫌いなのに」


知ってます。と返す代わりに彼の手首にそっと触れた。

そこにある確かな感覚。触れた皮膚は冷たい。


「透佳さんだって、同じじゃないんですか」


なんて、本心で思ってなどいない。言ってみただけだ。悲しい、寂しい、とかを彼が思うものか。

同じならいいなという私の願望だ。


「違うね」


ほら、ハッキリとした嘘の隙間もない否定。

だから。


「俺はアンタ犯して楽しんでるだけ」


この言葉だって彼の真意なのだろう。そう確信した。