許可を得た為、私は気持ちだけを急きながらゆっくりとお風呂場へと向かった。

そうして直ぐにシャワーの蛇口を限界まで捻った。

熱いお湯を体に受け、暫くボーッとする。湯気がどんどん鏡を曇らせていき、掌で鏡を拭いた。

映るのは当然私で、疲れ切ったような顔をしていた。視線をほんの少しだけ下げる。貧相な体だと、鏡に映る自分を貶した。

と、そこで漸く気付く赤い縄みたいな跡。私の手を縛るような掌の痕。


「……」


――手、押さえつけられてたっけ。

それすらも朧気で、でも残っている以上間違いではない。撫でるように手首を触る。私の手じゃその赤さは隠しきれなかった。

これは暫く消えないなと呑気に思いつつ、小さく笑う。


「私……」


独り言を呟いた途中でグッと唇を噛みしめた。

そして俯きタイルにペタリと座り込み、またしばらく熱いお湯を浴び続けた。

拭った鏡が再び曇りはじめていた。