手に、血がついた。赤い紅い血。

ガーゼでそれを拭い、新しいガーゼを切り貼りしていく。どうやっても目に入る、入れなきゃならないのは彼の手首の傷口以外ない。

ずっと聞かなかったが、不意に聞いてみたくなった。


「何で、こんなに切るんですか?」


バカな質問だろうか、これは。チラリと彼を伺うと、手当てされている手首をまるで第三者であるかのように見ながら、ポツリと溢した。


「癖だから仕方ない」

「癖?」

「血を掻き出そうと思ったんだ」


“最初はね”


その音には、その音にすら何の感情もなく聞こえた。


「……」


彼は、思っていたよりも危なくて、そして……悲しい人なのかもしれない。

最初はと言うことは今はそうじゃないと言うこと。そうじゃないのに切ってしまうから、だから癖なのだろう。


清潔な包帯をぐるりぐるりと巻き、手を離した。