思っていた以上に、彼は危ない人なのかもしれない。けど、それでも離れようと思う事が出来ないのは


「思い込み。もう一個教えてあげる。人って触れ合えば合う程好きだって錯覚するんだって」


つまりはこう言う事。

同時に彼も同じ人なので、言わずとも結論は出てる。


「所詮は錯覚だからね。アンタより長く生きてるから、ちゃんと分別は付けてるよ。アンタは全然、出来てないみたいだけど」


なのにどうしてか、否定をする。

唇を噛み締めていると、徐に頬に手が伸ばされた。

錯覚だと言う彼。錯覚でも触れられる事に嬉しさを覚える私。

でも本当はこれ以上先に触れられると嫌悪を感じている。これが答えなのか。


「……――」


――何を今更甘えた事を。

自分に腹が立ち、悔しくなって彼の手首を掴んでいた指に力を入れた。爪を立てた。


「っぅ――!」