「神楽君は只の友達です。友達以外何もないです。さっきの思い込みの話が本当なら、私は透佳さんと会う度に言います。『貴方は私が好き』だと」


宣言してみせると、また少し間が開かれた。戸惑ったのか。違う、彼は戸惑いはしない。

彼は彼を崩さないのだ。瞬き一つしたその次の事だった。


「ね、女子高生、あんまりおにーさんを煽ると……――死んじゃうかもよ?」


崩さない筈なのに、体がそれに反応するかのように震えた。抑揚のない喋りなのに一見茶化しているような言葉。でもそうじゃないのはよくわかっている。

普段から冷えたような瞳は更に冷えて見え、私が映っている筈なのに誰も映ってなんかいなかったのだ。

反射的に自分から視線を反らした。


「ぁ……、それ、どういう意味……ですか?」


怖い。と感じているのか喉が急速に乾きを訴えた。声がいつもと比べられないくらいか細い。


「そのままの意味。この間言ったじゃん。独占欲強くなると犯罪犯しそうって」


記憶を遡る。いつかの占欲の話。十分に覚えていた。

嘘じゃない。


「あれ、嘘じゃないよ」


嘘じゃなかった。

一種の麻薬のようで催眠のようで、彼に溺れ始めていて思い込んでるだけかもしれない。けれど彼を疑わず嘘じゃないと、嘘つきじゃないと根拠もなく信じていた。