「あれ?神楽君、家こっちじゃないの?」
校門まで出てきたのはいいのだが、神楽君は千代がいつも帰る方向とは違う向きに歩いていこうとしていた。
でも、そう言えば昨日も彼の家の方向で傘を貸してくれたな。あそこも逆方向だ。
だけど、何故?
首を傾げると神楽くんは笑顔を浮かべて言った。
「いやー、いつも時間潰してから帰ってるからさー」
「え、何で?」
「まー……色々?」
イタズラめいた笑み。よく分からない人だ。
「それじゃあ」と神楽君が挨拶をする手前、私の口は既に開いていた。
「ちょっと待って。私も遠回りして帰るね」
神楽君に限ってはいない。私も私が、私自身の事なのによく分からない。
「そう?じゃあ行こっか?」
「うん――……」
……嘘。ただ、いつも一人が寂しいだけだった。