「私が使ったので綺麗じゃないかもしれませんが」
「……傷からバイ菌入って膿が出来て、腐り始めたらどうしよう」
「そこまで汚くありません。そうなる前に病院に行ってください」
「嫌」
切るように言うと、ハンカチを傷口に当てた。薄ピンクのいかにも女の子の物ととれるリボンの飾りがついたそれは、渡った相手には全くもって似合いはしない。
じわりじわりとハンカチに赤い色が滲んでいく事から、まだ出血をしているのだろうが、それでもやはり表情一つ変わらない。
ジッと彼を見ていると横目で此方を見てくる。
「髪長いね。俺そう言う髪型好き、かも」
何かと思えば、脈絡もなく発される感想。
伸ばしっぱなしの黒髪にパッツン。そんな髪型が好きだなんて、はっきり言って微妙な趣味のような気がする。私の場合、重い雰囲気を醸し出しているのに。
それでも、見た目に関して褒められたのだとすれば“好ましい”“可愛い”と思われる事を望む私にとっては喜ばしい事だ。
ああ、でも。かもって事は好きか嫌いか微妙な立ち位置って事か。なんて結論を纏めるも、返事をせずに居ると彼はまた唐突に言った。
「とりあえず女子高生、ここに居ると危ないよ。主に貞操が」
怖がらそうとしているのか、遠まわしに帰らそうと言う良心があるのか、無表情からは分からない。でも。
「――……知ってます」
だって知っていてここに、こんな所に来た。