虚愛コレクション



そうやって出来上がったものはパスタ。パッと見は簡単な感じに見えるけど、手伝った時に見ていればそこそこ手が込まれていた。そして美味しい。更にボリュームもあるときた。人は見掛けによらないのか。


「細いから食べてないイメージがあったんですけど、意外と量多いですね」


と、言うのはいささか失礼かもしれないなんて、後で気づいたがそんなことで怒るような彼ではない。現に、文句などが溢れる事はなかった。


「人の三大欲求の内、二つが満たされてさえいれば欲求不満は解消されるらしいからそうしてるだけ。一つはアンタが解消してくれるし」


同時に彼はカチカチとフォークを噛んだ。


「じゃあ、透佳さんが食っちゃ寝しちゃえば私は用済みになってしまうんですね」


カチカチ。と、また噛んだ。考える時の癖だろうか。


「俺、食べるのも寝るのも好きじゃないからどうだろうね」


と言う彼は食べるときでさえ無表情なので、嘘ではないだろう。

美味しそうにも不味そうにも食べない。只の作業のようだ。

彼をジッと観察していると、ふと目元に薄く隈が出来ているのに気がついた。


「透佳さん、寝てないんですか?」

会話の内容から察せば、満たされてないのは睡眠欲だ。指摘したことに「案外鋭いね」なんて返される。


「どうしてですか?」


更に問い掛けてみるも、


「遊び呆けてるようにも見える大学生も色々やる事あるだけ」

「色々って何ですか?」

「教えない」


即答の即答だった。折角会話のキャッチボールが出来そうだったのに相手が受け取ってくれないんじゃ、成立しない。なんたる気まぐれだろうか。

気に食わないと思いながらもペロリとパスタを平らげた。時刻は勝手に過ぎていく。