例え、どれだけ率直でもいいのだ。
「だって、もうなんでもいいかなって。それに……透佳さんに興味持っちゃったんです。これしかないと思いました」
私を見てもらうには。このシンプルな欲求を満たすためには。耳にこびりついた母の喘ぐ声を消し去るには。
全てを上書きしてしまえる事が必要だった。
思い出して感情が下がるように、瞼が下がりつつあった。
「あの日、テストで早く帰宅出来る事伝え忘れてたんです。透佳さんはそれだけって言いましたが、私にとっては……」
「ん、喋りすぎ。あと屈折し過ぎ。高校生は高校生らしく純粋な付き合いしたら?」
開いていた口を閉じ、閉じ掛けた瞼を持ち上げ、視界に彼を写した。思考を振り切り、無表情に笑顔を向けた。まだ笑える。いいや、多分笑みの部類が違うのだ。
「今更、透佳さんから離れませんよ?」
悪い笑みの部類だ。
「俺と居ても、アンタが望むようにはできないよ」
「でも、透佳さんが望むようには出来ます。透佳さんの好きなキスの仕方も把握しました。ほら――」
首に腕を回し、唇を寄せる。薄く目を開けると目が合った。こんな時も、変わらない。
それでも続ける。長い長い絡み付く口付け。そして窒息寸前までの呼吸を無くすほどのキス。
「――……こんなキスが好きなんですよね?」
「ほんと、女子高生って怖い」
「手を出した透佳さんの自業自得です」
その選択肢しか与えなかった私の責任でもあるけれど。


