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「透佳さんって、今までどんな人と付き合ってたんですか?」
可愛くない制服のスカーフを弄びながら徐に聞いてみる。彼は気だるそうにソファーに身を沈めている所だ。
音も無い静かなこの彼の部屋では、微かな音さえ聞き逃す事はない。私が一瞬視界から彼を外した今、少し動いた事さえ分かった。
「この間からやけに俺の事聞いてくるね。聞いてどうすんの」
「透佳さんを知って透佳さんをもっと好きになりたいんだけです」
スカーフを片手に持ちながら、立ち上がる。必要な家電以外何もない殺風景な部屋は余りにも広すぎる。
ヒタヒタ靴下を履かないまま裸足で床を歩き、ソファーの側で膝を付き、彼の顔を覗き込む。目を反らす事なく私だけを見つめてくれる。それだけで悦に浸れた。
「……アンタさ、俺好きになってどうすんの」
熱で掠れてしまったような声で、興味もないそんな質問をしながら、自分の頬に掛かりそうな私の髪を邪魔そうに払った。
邪魔に思われているのだろうか。それでも私は宣戦布告のように吐いてみせた。
「分析した上で、透佳さんの一番になれるようにします」
「心配しなくても、ここ最近じゃアンタが一番だよ」
その言葉に他意は多く含まれているのだろう。微笑んで見せて表面だけを受け取ってみるけど、そんなんじゃ全然足りなかった。


