初めて、ちゃんと本当の事を言えた気がしてスッと心が軽くなったような気がした。
そう言えば、と神楽君の方に目を向ければヒョイッとテトラポットの上に降り立った瞬間だった。
「え!?神楽君何してるの?!」
『神楽?あ!神楽がまた祈を引っ張り出したんだね!?』
思わず声を上げてしまったから、容易に神楽君と一緒に居る事がバレてしまったけれどそんな事は些細な事だろう。
下に降り立った神楽君を眺めていれば、飛び跳ねるようにテトラポットの上を移動して手を伸ばす。
一体何をしているのかと目を凝らせば、手にしていたのは先の鈴で、見る限りでは潰れてしまって音すら鳴りはしないようだ。
それでも、それを大事そうにポケットに入れて此方に上がって来る為に少し先にある階段を目指しているようだった。
『もしもし?祈聞いてる?』
「え?あ、ああ……えっと、また明日ちゃんと話すね。ゴメンね」
疎かになっていた会話を無理に終わらせる。二つの事をこなせる程私は器用ではなかった。
それでも、明日の私は明日の私として千代と接するのだ。


