いつだって、私の上に立ったような発言ばかりをしていた神楽君に仕返しだ。
パクパクと口を開くばかりで言い返せない様を見ているのは気持ちがいい。
そして、案外相手も短気らしい。
「っ、っ!!な、何が良い子で可愛い祈ちゃんだよ。ぜんっぜんかわいくねぇ!ちゃんとその見た目通りでいろよ!」
「それは神楽君が言ったんじゃない。それに、こんな私も“嘘じゃない”んでしょ?」
「……」
ニッと笑って見せれば、歯を食い縛ってまた押し黙る。
そして、二、三度波が押し返す音を聞いてから諦めたように大きくため息を吐いた。
「――……そうだよ。それを嘘だって言うなら僕がいつでも肯定する」
「あはっ……!」
愚直までの優しさにまた笑ってしまう。いや、それは本当に優しさだったのだろうか、もしかすると同情心なのかもしれない。
それでも口内で“ありがとう”と呟いて、もう一度自分勝手な宣言をして見せる。
「だったら、私はいつでも肯定してくれる神楽君に賭けるね。……もうちょっとだけ、諦め悪く千代と友達でありたいから」
「……そこは信じるって言う所じゃねぇの?」
「ふふっ、私が信じるのは透佳さんだけだよ。だから後は全部賭け」
「性格わっるいなぁ」
呆れたような顔を見せながらも、やがて神楽君もまた笑いだす。
全てを綺麗に清算する事など難しくて、またきっと私は同じように繰り返すのだろう。それでも無様に生きていくのだ。
そう、こんな事は“よくある話”だ。


