思わず視線を逸らして、私も神楽君と同じように力を抜いてへたり込む。

私の拠り所を踏み荒らして置いて、何とも自分勝手な言い分ばかり並べられたものだと言ってやりたくもなったけれど、口には出来ない。


「……」


だって、意地から神楽君に噛みついただけであって、私はもう彼ととどうこうありたいなどと言う気持ちなどないのだ。

いや、元々未来なんて見ていなく、今しか見ていなかった関係に終着点などなかった。

それでも自分から手放しは出来なかった癖に、手放された途端これだ。結局口で御託を並べていたにすぎなかった。

だったら、きっと、私は両親から手を放されたらそれを受け入れてしまうのだろう。人の情に付け込んでいるにすぎないのかもしれない。

こんな風に気づけたのは第三者の介入が大きくて、神楽君のおかげだとも言えるのだろうけれど、お礼なんて言わないし、感謝の言葉なんてものも述べない。

もう取り繕いなど無用なのだから、天邪鬼に言いたいように言わせてもらうだけだ。

自分勝手に言えるのは、自分以上に他人の事が見える瞬間があるからだ。悪い事も、良い事も。

頬に掛かった髪を払って吐き出してやる。


「結局神楽君は千代なんじゃない。シスコン」


それに大いに反応するように「はぁ?」と怒ったように低い声が上がってくる。


「祈ちゃんには言われたくないね。透佳さん透佳さんって、結局そーゆーことやってばっかだったくせに」

「そういうことすら私とやれなかったのによく言えるよね」


言葉を選ぶ事なく吐き出して、吐き捨てて。


「一緒にしないでくれる?僕はちゃんと好きな人とちゃんと手順を踏みたいの」

「どうせ私がファーストキスだったんでしょ」

「!!っ、っ~~!!」


カチンときた神楽君の顔を見た時にはもう吹き出してしまっていた。


「ふっ、あははっ!案外神楽君も顔に出やすいんだね!!」