私の無責任で無慈悲とも取れる言葉に神楽君は漸く顔をあげて、何処か泣きそうに微笑んだ。

震える声で、自らの憑代を口にする。


「――……諦めないでって千代が言ったんだ。“諦めようとして踏ん切りつかないなら自然と手放せるようになるまで諦めないで居たらいいんだよ”ってずっと悩んでた時に何も知らない千代がそう言ったんだよ。なんにも知らねぇくせにさ」

「そんな無責任な言葉を信じるの?」


そこまで苦しんでも尚、信じることに意味などあったのか。


「……祈ちゃんならきっとわかってくれるだろ?透佳さんの嘘の無い言葉を信じたのなら、それに縋りたくなった気持ちと同じだよ」

「!!」


ぞっと背筋が冷たくなる。

何でも分かったように言葉に出して、私の道筋を綺麗に整備して歩かせてきた。

そうできたのは神楽君もまた、誰かに依存するように、執着して生きているから。

また自分を見ているような気分になって恐れをなす。


「っ、」


はっきりと自分と重なって体の底から震えが起こる。私自身を見ているようで、それでも此方を見据えた二つの目は私とは違う。

どこも虚構など見ていなかった。


「唯一の誤算は関わるつもりなんてなかった祈ちゃんに関わって、妙な情を持った事だった。それでも、関わった事を後悔なんてしない。それを含めて、諦めたくなんかなかった」


だから、その妙な情を持ってして私の為と謳うように現実を見させた。

だから、その諦めたくない意地から執拗に彼を探っていた。

だから、その混ざり合った感情からお門違いの恨みが沸いてしまったのだろう。