このことを聞いても触れるつもりなんてものはなかった。
さっきだって、頭の隅に追いやってしまう程に、私自身にとってはどうだって良い事だった。
だって、腹違いだろうが不貞の結果だろうが、そんな他人の事なんて、同情して自分に重ねるような自己中心的な考えしかできないのだ、私はそんな人間だ。
「腹違いだって言っても殆ど面識のない他人なんだから似てる訳ないだろ」
「でも、人を惹きつける所は似てるのかも。三人とも」
「何だそれ」
「ちょっとめんどくさそうな人に好かれるんだよ。ほら、西君も諦め悪かったし」
「それは西君への悪口になるけどいーわけ?」
「……そうだね、西君は関係なかった」
そんな下らないように聞こえる会話を繰り返して、繰り返して、また言葉を尖らせて突き立てる。
「……千代も神楽君も……透佳さんも私にとって厄介な、厄介で……っ――」
そうやって突き立てようとした。なのに、どうしても出来ない。
突き放すのなんて簡単だ。罵声して罵倒してしまえばそれで終わりだ。
だけど、この後に及んで私はまだこの手を放しすらできていなかったのだ。
ボロッと、思わず涙が零れたのは可哀想な自分を演出しようとした天邪鬼が顔を出したのか。ただの弱さだったのか。
「っ……ほんと、やっかいだなぁ……」


