吐き出す度に、心臓が嫌な音を立てて速まる。


「はっ……っ、」


大きく息を吐き出して、また吸い上げる。こんな事を言ってしまってよかったのか、なんてものは今後悔しても遅い。

ましてや再び逃げれる程に、足が動きそうもない。

こんな感情から逃げて目を伏せて虚構を見続けるのは簡単だった。自分の都合の良い物として作り上げて、良い部分だけ目に入れておけばいいのだから。

ぐるりと視界が廻る。世界が反転したような錯覚を起こす。

虚構の奥の奥で、執拗に夫婦の間を取り持とうとした中学生の私がいた。

瞳は冷めきっていて、煩わしいのが目に見えて分かっていた。

ああ、そうだ。私はいつだって人の顔色ばかり疑っていた。なるべく嫌われない様に、なんて。


「っ、でも、私、ずっとずっと……っ、どんな事でも向き合うのが怖くて……こわくて……!!」


だから目を逸らして見ないふりをしたのだ。


「私、愛されてないんじゃないかって要らないんじゃないかって、ずっと思ってて」


それでも、夫婦間の会話はせずとも私個人とはちゃんと会話をしてくれていたのにそれすらも、見ない振りをして自分独りが可哀想だと嘆いていた。

だからこそ。と顔を上げて神楽君の瞳に映る私を確認した。


「透佳さんは絶対に私を慰めてなんてくれなくて、他人事で、でも私を見て嘘なんか吐かなくて……だから、だから……そんな透佳さんの事が……っ、」


“好きだった”と、勢い任せにまた俯いて吐きだした筈だったのに、波の音に掻き消されてしまう。

いや、もしかすると言葉にできなかったのかもしれない。