私が、私の為だと渡された心を拒絶するなら、そうやって話を聞いてもらうしかない。

それでも、そうやって向き合う神楽君からは間違いなく“私の為”に言ってくれているのが伝わってきてしまう。

どれだけキツく言われたって、どれだけ意地悪に聞こえる言葉だって、ずっと正論を突き付けていたのだ。

間違っている。と。

不意にその事実に震えて、思わず神楽君に手を伸ばしたくなった。

都合が良くとも、みっともなくとも、縋り付きたくなった。

神楽君はそれを察したのか握っていた私の腕を離した。

カクリ、と力なくその場に座り込んで、ギュウッと神楽君の服を握り込む。

神楽君の表情を見れないまま、二人の間のコンクリートばかりを見つめる。


「――……私、怖かったんだよ。自分の事が大事で堪らないくせに、大事にしてくれる素振りを見せてくれる人の事が。だって、いつか幻滅されちゃうかもしれない」


だから、境界線を引いて誤魔化して閉じこもった。


「でも心配とか、そう言うのを嬉しいって感じる反面、お節介だって、そんな事も思ってて」


それも本当だ。ずっとずっと、私の邪魔をする神楽君の事を疎ましくさえ思っていた。千代がそれとなく心配するのも少しだけ鬱陶しかった。


「それなのに、千代が西君と付き合った時も自分勝手に居場所がなくなったような気がして、ううん、それより前から、神楽君と同じように不幸を願ってて……」


何処が良い子だったと言えるのか、一つだって誰かの幸せを願えなかったのに。

一つだって、誰かの為なんて言えなかったのに。

少しだって友達の事を考えた事無かったのに。

最低で最悪で目も当てられない。