その手を振り払いもせずに神楽君を見下して見つめる。

下からは視線が返ってくる。


「本当に、祈ちゃんは自分勝手だよな」

「そうだね」


間違いはないと頷いて、曖昧に笑って見せる。


「離れるのは勝手だけど、それって結局僕からも千代からも逃げてるんじゃねぇの?」

「……そうだね」

「透佳さんの事だって、祈ちゃんは自分で気づけた筈だ。だからこそ、逃げないで向き合ってよ」


神楽君は私にそう要求する。


「……」

「どうせ逃げるんだったら悪口でもなんでも言ってからにしてよ」


そうやって、私に吐かせようとするのだ。


「……私の為だったらそう言うのはもういいよ」

「いいや?これは僕のエゴだ。こんなのは祈ちゃんの為なんかじゃない」


僕自身のエゴだ。なんてのも神楽君の優しさなのだ。

私を見抜いた神楽君だからこそ、私が求める事だって分かるのかもしれない。

どうしようもない人間だとしても、決してこの手を離さないのだ。