また何となく西君に視線を向けた。ボーっと友達同士で楽しそうに話をしているのを見ていると


「!」


思いがけず目が合った。いや、千代を見たのだろう。なのに私と目が合うや否や、いや私と目が合ってもニコリと笑い掛けてくる。

さすがの好印象、悪い気には全くならず、私も小さく微笑んだ。

そして、友達に何か一言告げてから此方に歩み寄ってくる。お目当ては千代なのは目に見えているが、とりあえず話の切り口に私から声を掛けてみる。


「……西君もお菓子食べる?」

「西く……?っふぇぇ!?」


気付いてなかったらしい千代が後ろの彼人物に気付くなり、椅子から滑り落ちる。意識しすぎてどうしようもないらしく、こういう光景は何度か見ていた。

千代が椅子から落ちる前に私が差し出したお菓子を口に加えながらも、西君は笑みを浮かべ手を差し出す。

ああ、なんて光景だろう。


「――……」


そうやって、意識して想い合っているのなら早く付き合えばいいのに。


「あ、あああありがとう!ご、ごめんなさい……!」

「ううん。大丈夫」


――……そして早く別れて嫌いになればいいのに。