でも実際に私は受け入れて、私は家族を演じた。受け入れて、私はまた新しく友達を作ろうとした。

そうやって今までやってこれていた。それをきっと繰り返していく。彼に対しても同じなのだ。

それでも、少しだけ足掻いてしまうのは子供だから。なんて言い訳をして、話をしている間にも手当してくれていた指先を自らの掌に握り込む。

脈打った痛みが心地いい、だなんて変な話だけど、きっと泣いてこの気持ちを瘡蓋にしてしまえたのだろう。


「何、笑ってんの」

「いいえ?すこしだけ透佳さんの事、見えた気がしたんです」

「今更だね」

「そうですね」


と、赤くなっているであろう目でまた必死に笑って見せる。

彼に映る私がせめて可愛くいれるように。そうして、最後の足掻きだけをさせてもらおう。


「透佳さん」

「……」


名を呼び彼のその白い手を手に取って指と指を絡ませる。やはり、女の人みたいに細くて綺麗な手だ。

彼は手を振りほどくことなく、私の行動を只傍観する。

するっと、指先を滑らせて小指と小指で結ぶ。


「これで最後です。――……私、きちんと大人になるって約束します」


子供くさいと言われた約束の儀式を一方的に交わす。

きっとまた『子供くさい』とか『馬鹿みたい』とか思っていたに違いない。それでも、僅かに小指に力が籠り指は切られた。

それは私なりの足掻きで、私なりの決別だったのだ。