それでも夢だってよかった。彼が歪んだ行動で私を引き止めてくれるのならそれだって喜んで受け入れただろう。

けれど、それでも彼は現実に生き、現実を見ていた。いや、そうしようと努めていたからからこその歪んだ行動だったのかもしれない。


「納得できなくても、泣いて受け止める位は出来るでしょ」

「っ、……そんな嘘くさい大人が言うような言葉要らない、です」

「仕方ないでしょ、アンタと違って大人なんだから」


そう、同じように子供だったのなら、現実なんて見ていない。大人は夢なんて見ずに、夢も語らない。現実に対して見て見ぬふりをするだけなのだ。

だからこそ、彼に惹かれはしたのだとしても、思ってしまう。


「私、大人には、なりたくないなぁ……」

「……そうだね。アンタはずっと子供のままがお似合いだよ」


そんな事出来もしないし、私が子供のままでいて困るのは彼なのに“大人になれ”とは絶対に口にしない。

私が大人になんて成れない事を分かっているとでも言うのか。

もしかすると彼もまた、大人になんてなりきれていなかったのかもしれない。

彼だって納得できないまま納得して、何かを受け入れて居るからこそ私にそんな言葉を投げかけてしまえたのかもしれない。

だから、自分自身がそうできていないからこそ、大人になれとは口に出来ない。なんてものは、私の妄言だろうか。