髪を伸ばせば女の子らしくなって、伸ばせば伸ばすほど可愛くなれると信じた。

俯けば顔を隠してくれるこの髪は私のシェルターみたいなものだった。

それを、彼は言ったのだ。

そう言う髪型が好きかもしれない。と。

妙に曖昧で、はっきりとした言葉じゃなかったけれど、何となく私を認めて貰えたような気がして、一層手入れに励んだ。

まだ、可愛い私でいれると。

けれど、もう要らない。こんなものは要らないのだ。

どうせ彼が好きだった時の私は居ないのだから。これで終わりにして納得しよう。

私は彼を殺す事等望んでいない。だって、嘘でも何でも彼の事が……。


「っ……!」

「な、なんで……?」

「……ほんと、子供だよねアンタは。せめて可愛いままでいてよ」


一本、二本、長い黒髪が床に落ちて、後を追うようにパタパタと赤い血が零れた。

自分の掌を傷つけてまで彼は私を庇ったのだ。

長い髪が頬に触れる。

私が変わったと言ったけれど彼だって変わったのではないか。

それでも、彼は私に追及される事を望みはしないのだろう。


「……指、見せて」


ジクリと指先が痛んだ。