結局、神楽君とのことだってそうだった。相手からから逃げたのだ。間違いなく聞いてもらえたのに。間違いなく受け止めてくれると思ったのに。

自分勝手に我儘になって自棄になった。

こんな私を誰が救えたと言うのか。救われようとすらせずに一人手を振り払ってしまう癖に。


「不幸自慢は不幸な話をした人勝ちだよね。でもね、結局アンタの話は良くある話で、何も不幸な事なんてないんだよ」

「!?な、何で……!何で、今日はそんなに酷い事言うんですか!?」


カッと顔が熱くなり、勢い任せに彼の腕を掴んだ。

自分を貶された事への怒り。私の苦しみは私のもので、苦しみの程度の話など要らない。


「“今日は”じゃないよ。俺はずっとそうしてきたでしょ?それを酷いだなんて言うのは、そう感じるのは、アンタが変わった結果だよ」

「っ、っ~~!!」


間違って等居ない。これも言い返せない。彼は彼として全く変わってなどいない。

ずっと辛辣で現実的に突き放していて自分勝手で。人の顔色なんて窺った事もない。


「ね、それが素なんでしょ。さっきみたいな笑い方なんて一度もしなかったし、そんな不細工な顔でもなかった」

「……」

「俺ね、余裕ぶってる癖に死んでるような表情してたのも欠落してた頭のおかしい所も好きだったよ」


何がきっかけでこんなに変わってしまったのだろうか。神楽君には“笑うのが下手くそになってきている”と言われたばかりだ。変わったつもりなどないのだ。

変わらずに彼の好きな私で居れると思っていたのだ。