苦笑いを浮かべて頬杖をつきながら、視界の端にいた話の張本人、西君に視線を投げた。
男の子にしては珍しく艶のあるさらりとした黒髪。女子同様ダサいと言われている制服でさえ、そう思わせないように適度に着崩して着こなしている。雰囲気としては柔らかく、誰とでも仲がいい気さくな人。優しすぎるくらい優しい。
それが西君という人物。そんな人が千代は好きなのだ。
暫く観察するかのように見た後、また視線を正面に映した。
「うーー……」と、唸りながら恥ずかしそうに俯き加減。
「……好きなら好きって言えばいいんじゃないの?」
「や、無理無理無理!」
軽い調子の私に対し、これでもかと言うくらい首を横に振る。
大袈裟すぎるのだ。好きならこうなるのは仕方ないのかもしれないが、心配せずともに西君は千代が好きだ。
何故なら、少し前に西君は千代に告白しているのだから、疑うべきことはない。
「……ま、ゆっくりしても西君は逃げない、か」
千代のネガティブ思考が作動しなければ上手く行っていたけれど、西君は西君で物凄いポジティブ思考なので未だに千代にアタックしていたり。
だが、どう返答したのかは分からないが、ネガティブ思考を全面に押し出してハッキリと返事しなかった。と推測すると、ポジティブ思考の人じゃなくとも諦めはしなかっただろう。
焦れったい。けれどずっと焦れったくしていればいいなんて思った。