「そっ、れは……!……私の事が好きだと言う事の証明ですよね?」

「……」


悪あがきのように言って見せれば、ゆるりとまた瞳は此方に向けられた。

何か答えてくれるのかと期待をしたけれど、彼は視線を外してしまう。

肯定も否定もしない。言葉を告げる事もない。

音のない部屋は耳すら痛く感じるような気がする。誤魔化すように、沈黙に殺されてしまわないように口を開く。

だって、そうしないとこの部屋に居られないような気がしたから。


「――透佳さんの癖だって私は受け入れます。束縛癖があるならそうしたらいい、貴方が望むなら貴方のしたいように私はします」

「馬鹿じゃないの。話の趣旨理解してる?俺はもう今のアンタは要らない。今更何言ったってそれは変わらないよ。分かるでしょ?変わったものを戻すのは難しい事なんて」

「!!」


そんな事は分かっている。家族の事だって悪あがきの現状維持が精一杯で変わってから望んだ場所に戻った事など一度もない。

心だって変化してからは黒く黒く染まる一方で、上辺だけだとしても友達が沢山いた純粋な頃には戻らない。酷く固執するばかり。

だから、彼だって同じなのだ。変わってしまった私がもう戻る事は無いと知って、必要ないと拒絶する。きっとその心の変化は戻りはしない。


「っ、……私、透佳さんにも拒絶されてしまうんですね」

「“にも”ね。こうやってちゃんと正面向かって喋った事もないのに、悲劇のヒロインぶるんだね」

「っ!そんなの……!そんな事……!」

「ないっていいきれるの?」


そう、そんなことすら言いきれない。

私はいつもいつも、一定の線を引いて壁を作ってしまう。