「何か、犬の匂いするね」

「犬?犬なんて触ってませんが……ふふっ、透佳さんでも変な事言うんですね」

「……まぁ、何だっていいけど」


と何も変わらず興味なさそうにソファに身を埋める。

私はこの二人だけの空間が好きだ。殺風景な部屋が好きだ。私をしっかりその目に映してくれる彼が好きだ。


「……何?」

「いいえ?透佳さんの事、やっぱり好きだなって思ったんです」

「あ、そ」


私の告白を受け止めもせず、興味などないように聞き流す。

それでも追い出したりはしないのだ。

彼が座っているソファのそばに腰を下ろし、何となく手を伸ばす。

相も変わらず寝癖がついていて、ピョコピョコと毛束が跳ねている。彼は、どこまでも彼だ。

やわらかい髪質は、触っていて心地いい。


「……何」

「いいえ。ただ、触ってみたかっただけです」

「そ」