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逃げて逃げて辿り着くのは、どうしてもこの場所だった。

それでも悩んだ。悩んだのだ。

神楽君が言った言葉で、第三者に指摘されるだけで脆く崩れた地盤を見てしまって、自信など持てなかったのだ。

だから、本当にもう会うべきではないと自制はしてた。

それでも苦しさは消えない。どれ程神楽君が、千代が、私に気を掛けてくれても満たされない気持ちが消えない。

演じた所で家に帰る度に空しくてどうしようもなかった。

これほど悩んだのだから許して欲しい。なんて。

そんな私自身を馬鹿だと思わずにはいられない。けれど


「久々に顔見せたと思ったら、不細工になったね」


開口一番の遠慮も何も無い言葉。

ああ、そうだ。これだ。

罵倒されて嬉しいというわけでは勿論無いけれど、取り繕いもしない言葉が好きなのだ。

散らかしていた悩みを押し固めて頭の隅に追いやって、努めて平静を装う。

いつもの生活と切り離せばここは何も変わらない。