神楽君の言う好きは友達としての好きなのだ。解消した関係に残った僅かな感情。

行きすぎるほど私を気に掛けてくれてはいるけれど、その境界線は越えてない。

千代に、家族に掛ける情と似た種類の愛情。


「っ、っ!」


声にならない。

私がしていることは、私がしてきたことは。

不意にふわりと、神楽君が着ていた上着を肩にかけられる。


「……賢いんだから、ちゃんと分かってるだろ?」


下着姿のみっともない姿にもものともしない神楽君はもう、私の事を見抜いているのだ。

急激に冷えた頭は、半ば作業的にセーラー服を着なおしていた。


「昼にも虚しいって言ってたの。あれ、今の事も含めて透佳さんとの関係に当てはめてみなよ」


そうやって、今一度見直せと導きを示してくる。

だけど、そんなのは要らない。分からなくたってもいい。

そのことに気づいてしまったら私は、私は……

でも、そうだ。

この行動が間違っていると最初から分かっていたのなら、悪いことに目を背けずに向き合っていたのなら、こんな虚しい愛情を求めずに済んだ。

あんな嘘に塗れた家族を欲さなくてもよかった。


「っ!……がう、違う!私、私は……やっぱり透佳さんじゃなきゃ……!」


それでも彼を思う気持ちを、彼を欲する気持ちに偽りなど無いと信じたかった。

気がつけば私はそのまま部屋から走り出していた。