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人間なんてみんな馬鹿だ。悪いことがあれば都合よく目を逸らすのだ。


「祈ちゃん!!ねぇ!何考えて……っ」


此処に来て最後まで私の手を振り払えなかったのは、神楽君の優しさなのだろう。

全体重を掛けて押し倒せば容易くベッドの上に追い込むことができた。

こんな馬鹿丸出しのホテルにきて何も分からないほどの男の子では無い筈だ。

無駄に貼り付けられた鏡には、コートを脱ぎ捨てた私が映る。


「――だって、私これしか知らないもん。寂しさの埋め方」

「っ、それは、透佳さんとの関係を……」


と言いかけて唇を噛む。

言葉の続きなど気にはしない。どうだっていいことだ。


「さっき、何を見たの?」

「……」


答えたく無いとゆるりと首を振ってマフラーを外して髪を払った。