特にそれ以上の会話もないまま、作業のようにお昼ご飯を詰めんでいた。
「……」
ふと、窓の外を見れば中庭に千代と西君がいるのを見つけた。
仲がいいな、羨ましいな。なんて。
「神楽君は、千代と西君を見て何も思わないの?」
「……?」
不意に私が声を出したからか、暫しの間が置かれる。私の視線の先を追うように、窓の外に目を向けて「あー」と漸く納得を見せる。
「僕と千代は姉弟だよ。何を思うって言うのさ」
「でも、千代に執着してるじゃない」
こんな関係を作り上げてまで私を彼から引き離したかったくせに。そんな意味合いを込めて言葉に棘を持たせる。
「家族だから、“おねーちゃん”に彼氏が出来たらちょっとは寂しいけど、それ以上の事はないよ」
『慰めてあげようか?慰めてくれるなら』と千代と西君が付き合い始めた報告を聞いた日に神楽君は私にそう言った。
今更それを思い出して、少しの寂しさから出たその場だけの言葉だったのかと勝手に当てはめる。
「祈ちゃんは居場所が欲しいんだろ?窮屈に思わない居場所が」
また、あの日と同じ話。
『居場所、なくなったなぁって思ったりした?』と的確に私の嫌なところを突くのだ。
それでも、今なら解ってくれている事が心地よかった。


