怒っているような内容なのに、声質、声色によって怒っているようには聞こえない。

今は二時間目と三時間目の休みで、そう言われてみれば千代は神楽君の所に行くと言って出て行っていていたのだが、もしかするとわざわざそれの文句を言いに行ったのかもしれない。

二人は上手い具合にすれ違ったらしい。


「うわ!?ちぃ!?」

「……これ、千代のお菓子だったの?」


慌てる神楽君を余所に、知らずにもらったとは言え、他人の物を食べてしまったと、開けようとしていたチョコレートを再び机に戻す。


「あれ?祈が貰ったの?それだったらいいの」


此方に歩み寄って、机に散らばったそれらを見て先までの怒りは無かったかのようにケロッとする。

どういう基準があるのかは分からないけれど、本当にいいのかと恐る恐る千代を見遣れば、説明が追加される。


「家にお菓子常備してるんだけどね、私のと神楽のとちゃんと分けてるのに時々神楽が取るんだよね」

「ちぃだって僕の盗むじゃんか」

「神楽が取るからだもん」


と、目の前で姉弟喧嘩のようなものが始まる。と言ってもじゃれ合いみたいなもので可愛い物なのだが。

互いに言いたい事を言い合って、それで気が済んだのか、ふと思い出したように千代が声を上げる。


「そうそう。神楽の事、久住が探してるって言付かってたんだった」

「誰に?」

「その久住さんが。そう言ってって」

「うん?……あ!ああ~~!日直だ!」

「……――」