おどおどとする間抜けな私を余所に、千代は事情を説明してくれる。


「『きっと祈ちゃんは動揺して今日言えないだろうから、明日に間に合わねぇだろうから』って昨日家で先に聞いてたの、二人が付き合ってる事。『祈ちゃんは絶対千代に一番に言いたがってはいた』って」

「ほんっとーーに、悪かったとは思ってる!ごめんな!」

「え?え?」


こんなのは茶番だ。付き合っている事実は勿論ないにしても、私は何も言っていない。全ては神楽君が一人で仕組んだ事だ。


「祈、自分の事はあまり話さないもんね。言い辛いの分かるよ。だから、皆色々言ってるけど、私は祈に聞かないようにするね」


本当は聞きたいんだけどね。なんて可愛らしい顔を悔しそうに歪める。

もしもこれが作った話ではなくて、話の始まりが事実に基づくものだとしたならば、私は同じように行動しただろう。いや、行動したのは神楽君でその洞察力でこのシナリオを作ったのだろう。

だって、まさにそれはこうなってしまったときに私が“望む事”なのだから。

『祈ちゃんが望む事、望むように、何だってするから』そう昨日言った神楽君はそれを実行してしまったのだ。

全ては彼から私を引き離す為。彼の代わりに成り代わる為。千代の為。

そして、それでも私が不快にならない様に最低ラインをなぞっている。

だって、本当に手段を択ばないのならこんな手を回す必要はない。


「――ほら、祈ちゃん演じて。大丈夫、これは嘘じゃない」


ただ、千代の精神的なケアの為だったなら、嘘を吐かせることに配慮する事は要らないのだ。

だってこうなってしまった以上、嘘だってありったけ吐くのが私だ。千代を傷つけるのは本望ではないのだから。