まず私がする事はなんだったか。いつも通りの私で居る事に努める事だったか。体制を立て直して神楽君を責める事だったか。

いいや、そう。


「あの二人、付き合ってるんだってー」

「え!?そうなの!?意外」

「あ、でも千代ちゃんと仲良いから……」


この私に向かう事はない、遠巻きにひそひそと囁かれる噂の対処。

広まってしまったのなら仕方のない物をどうにか取り繕わないといけない相手が居るのだ。


「おはよう、祈」

「ち、千代」


一番の友達。一番になってほしかった私の友達。

こんな噂が広まってしまってからではもう遅いのは分かってる。でも、私の事を一番に知ってくれれば、まるで秘密を共有したかのように仲の良さが深まると信じて止まないのだ。

例えそれが空しく、虚構を作るものだとしても。


「千代、あのね、あのね……私……!!」


慌てて声を上げる私に対して、千代は柔らかく笑みを浮かべた。いや、大きく笑った。


「ほんっと、神楽がごめんね!!」

「へ?」

「神楽が迂闊な事したから、秘密だった事もバレちゃったんだよね」

「え?」


只管に何のことか分からずに、縋るべき相手ではない事は理解していても、縋るように神楽君を見遣ってしまう。