そんな矢先の事だ。


誕生日は一番に仲良くなった友達は休みだし、テストだし、憂鬱だとは思っていた。

でも、早く帰れるのはラッキーかな。ああ、ママに早く帰るって言うの忘れてた。
そんな事を考えながら家の鍵を開けると、真っ先に感じた違和感。

人の気配がする。ママだろうとは思うけどやけに静かで。いいや、違う。静かに聞こえて、その実微かに聞こえる声があった。


見ちゃいけない。近づいちゃいけない。


脳はそう警告するのに、私は近づいた。覗き見た。

自分の母親が浮気相手を連れ込んで、体の関係を持った最中のその姿を。


「っ――!?」


叫びたかった。怒りたかった。泣きたかった。


でも、そうできないのはまだ私は家族を欲していたからだ。

音も立てずに私は家を後にして歩き出した。