「……私が嘘ついてるって言うの?」

「いいや?その点、祈ちゃんは上手く誤魔化す事が多いよな?誤魔化しは嘘にはならない。だからこそ千代は釈然としない。……まあ、それは今どうだっていーけど」

「この嘘は祈ちゃんの為の嘘だよ。確かに恋愛感情なんてないけど、僕は友達として祈ちゃんの事が好きだよ」


半分嘘で、半分本当。そんな織り交ぜた物を受け取れと言うのだろうか。


「……要らない。私の為の嘘なんて、そんなものも要らない」

「だけど、あの人と関係を持ち続けるよりずっといいだろ?」

「それで満足しろって?結局神楽君のそれは千代の為でしょ?私の為じゃない」

「そう思うならそう思えばいい。けど、賢い祈ちゃんなら分かってる筈だ」


“それはあの人に対する只の依存だって”


「っ!」


聞きたくなくて耳を塞いだのに、どうしてか鮮明に聴こえたそれは、いつかに感じていた想いごと突き刺した。

ああ、こんな事、他人に言われたくなんてなかったな。

どろどろの汚泥で塗り固めていた地盤がいとも簡単にひびが入った気がした。