教室に入ってきた子が驚きの声を上げると共に、神楽君は私から離れる。
「あー……見られちゃったな」
そんな白々しい演技をして笑って見せる。いつもの人懐っこいような笑みで教室に入ってきた彼女たちに「ごめんねー」なんて謝って見せる。
平然とした顔で、先まで私を問い詰めていたとは思えない振る舞いで。
今したことなど取るに足らないと。
「っ、っ!!」
それでも今、私は間違いなくキスをされたのだ。
付き合っても居ないのに、好きでもないのに。そう、それの意味する事は
「祈ちゃんと付き合ってるの内緒だから、誰にも言わないでね。って我慢できなかった僕が言う事じゃねぇけど」
「う、うん分かった」
「戸倉君が最近よくこっちに来てるのってそう言う訳だったんだねぇ」
完全に神楽君の策中。それに私はまんまとハマってしまったのだ。
きっと彼女たちはこんな内緒話を簡単に話してしまうのだろう。
女の子の秘密など破る為にあるのだから。
「っ!ちが……!」
「そうそう。祈ちゃん可愛いのに、付き合うのは初めてだから暫くは内緒にして欲しいって言われてて……だから、本当に本当に内緒にして欲しいんだ」
「!!」
グッと押し黙ってしまうのは、そこに含みの言葉を感じたからだ。
付き合うの“は”なんて僅かに強めた語気は私に向けられていて、彼女たちが疑問に思うわけもない。


