口から言葉が零れ落ちていく。なんの意味もない問い。
「あ、や、やだ……!何で、何で?」
神楽君の言葉をうまく聞き取れなかったけれど理解は出来た。
カッと体が熱くなる。羞恥心からだろうか、怒りからだろうか。
それとも、泣きたいからだろうか。
「僕ね、透佳さんの事ずっと前から知ってたよ。あの人が高校生くらいの時から。だから祈ちゃんだけじゃない、祈ちゃん以外の人とホテルに入っていくあの人の姿を何回も何回も見てたよ」
怖い。この人は誰だろう。神楽君の姿をした化け物。それくらいの恐怖が私を襲っていた。
見ていた。見られていた。そんなはずない、信じたかったのに。
神楽君は見たことも無い冷たい視線でそれでも笑みを私に向けた。
「ねえ、あの人は今幸せだと思う?」
そんな問いかけ、私は知らない。
そんな答えはいらない。
目の前にいる人は誰だ。千代の弟。私の友達。そうじゃなかったのだろうか。こんな冷たい視線を神楽君が向けるはずがない。
いいや、違う。そうだ。一番最初から私にこの視線を向けていた。


