時間は驚くほど早く流れ、もやもやと考えている内に放課後になった。
けれど、神楽君とは一度も会わなかった。放課後もこっちの教室には来ないだろう。そう思っていたのに。
まさか、私が千代と帰らずに一人残っているなどと予想していたとでも言うのか。
神楽君は放課後になって随分時間が経ってから現れた。
「祈ちゃんはさ、透佳さんが好きなわけ?」
そんな言葉を携えて。
その言葉が示唆するのはクリスマスの日の事だろう。付き合っているのか?と聞かれた夏の日とはまた違う。付き合っていないと言ったあれは嘘なんかじゃない。付き合っているなんて言えないもの。
けれど、好きかと聞かれれば
「……好き、だよ」
嘘なんてものは吐けなかった。