巻かれた包帯を剥ぎ、カッターと同じ末路に投げ入れて、救急箱をテーブルに置いて、またソファーに腰掛ける。
血がダラダラと流れていると言うのに彼は至って冷静で、指先まで流れた自身の血をペロリと舐めた。
「……血、足りなくなっちゃいますよ?」
「そうだね」
また生返事だろうか。片手で乱暴に救急箱をガシャガシャ漁りながら、答える。
「もし足りなくなったらアンタが分けてくれるでしょ?」
問い掛けられても全然嫌じゃない。分けろと命令されても私は嫌じゃないだろう。
「でも、血液型違いますよね?」
もしも話に咲かせる花は黒くて黒くて真っ黒で。
「その時はアンタの血と俺の血全部交換してもらうから」
なのに、綺麗で儚い幻覚を抱いた。黒い花は彼自身。
「透佳さんの足りない血と交換すると、私が死んじゃうじゃないですか」
「足りないなら傷口から溢れる分までアンタが飲み干してよ」
「んぅっ!?」
青白い手を茎に例えてしまえば、養分の届かなくなった黒い花びらは垂れかかった。