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パチッと目を開きノロノロと起き上がって見渡せば彼の姿はなかった。
「っ、」
軋んだ体を無理矢理動かし散らかした服を回収し、ボーッとしたまま着直す。
正直言って殆んど記憶がぶっ飛んでいて、あまり覚えていない。何故だか変に口の中が粘っこく、やけに気持ち悪く感じた。
服を全部着た段階でふとある事に気が付く。
「何……これ」
両の手首に走る赤い跡、以前も赤い跡があったがこれは違う。青紫で、鬱血したようなはっきりとした跡。細めの線が幾重にも重なる跡。
ゾクリと何故だか背筋が震えた。
指先で触れようとした所で、足音がして顔をあげた。
「何だ。起きてたんだ」
「今、起きました」
さっと袖を手の甲まで伸ばして隠す。彼はガシガシとタオルで濡れた頭を拭きながら「風呂、使いたかったら使えばいいよ」といつものように言った。
そして、言葉に甘えるように私は浴室に飛び込んだ。


