水族館と言う彼にとってはつまらない場所でも、私が水槽を眺めるのに付き合ってくれた。

魚を眺めるだけなのでつまらないはずだが、彼は別段いつもと変わりなく無表情だった。

楽しいのか。楽しくないのか。そんな感情を持ち合わせていないのか。

それでも私は嬉しかったし、楽しかった。いつかまた、なんて想像は何故かできなくて、今日この日を大事に胸にしまっておこうと思った。


私の感嘆の言葉に相槌があったりなかったりだったが、自分でも分かるくらい浮かれていて、終始喋っていた。と、気づいたのは外に出て取り合えず目的もなく街中を歩いていた時だった。

気持ちが落ち着いたのか、特に色々言うでもなく少しだけの会話をして、それでも彼の服を摘まむ。

人混みに埋もれながら、人混みの中を掻き分けるように歩く。親子連れも友達同士もカップルも溢れる位にいた。

そんな中でも見付けてしまうのは何でだろう。

ふらりふらりとさ迷うように歩いて何処へ行こうと言うのか。

彼も気付かない一瞬の間、私はその人と目があった。


神楽君と。